歯周病と全身の病気
歯周病と全身疾患との関係が脚光を浴びてきた。それで厚労省も歯周病簡易検査の普及に向けてキットやアプリの開発支援を始めるそうだ(山陽新聞 23-5-1)。この考え方には賛成である。国民の健康な生活の確保に向けて進めてほしい。
科学的考察を望む
具体的に支援をする場合、科学的根拠に基づいた理論と成果が確認できているものを採用して欲しい。大多数の人々が信じているからと言う事で判断されると、税金の無駄遣いになる心配が出て来る。
昔、齲蝕活動性試験が健康保険に採用されたことがあり、数年で無くなった。その試験をした後、どんな成果が上がるかを考えていなかった。「あなたはむし歯に罹りやすいですよ」と言われた患者さんから「何をしたら良いのですか?」と聞かれたら、「甘いものを食べないこと、おやつの時間を決める事と歯みがきです」と答えるしかなかった。
今ではフッ素入り歯磨き剤の使用が最も効果的であることが証明されている。フッ化物応用の効果はその当時すでに分かっていたが、その理論は採用されなかった。
滝口歯科保健課長になってフッ化物の応用が勧められ、現在のむし歯の減少につなげることが出来た。国民はこのおかげで健康な生活の確保に一歩近づけた。
う蝕活動性試験の轍を踏まない
歯周病の簡易検査をして、次にどうするか、成果は上がるかを良く調べてほしい。8割が歯周病に罹っていると言われているのだから、検査をしなくても国民全員を歯科医院に通ってもらう方法も無駄金にはならないと思う。要は、効率的な予防・治療が出来るかどうかである。
科学的考えに基づいた歯周病理論
現在の歯周病の予防・治療法は、ブラッシング指導と歯石・歯垢除去だ。ブラッシグは曹洞宗の道元が歯間部清掃の重要性を説いていて、歯石除去はヒポクラテスの時代から言われている。700年以上前から同じことを僕たちは言っている。むし歯は減少したが、歯周病が減ったとは言われていない。現在の歯周病理論は古臭く、間違っているのに違いないない。歯垢・歯石を取るだけでは歯周病は予防できないと考えた方がよさそうだ。
宿主強化理論を歯周病に当てはめてみる必要がある。感染症は病原体と感染経路、宿主の三要素からなっている。現在の歯周病対策は病原体対策だけである。宿主要因が全く考えられていない。宿主強化によって歯周病が改善し、再発防止が出来ることを知って欲しい。
ブラッシングの刺激によって歯肉細胞が増殖し、歯周ポケットの潰瘍部分(歯肉出血部位)を修復するのである。しかし、この細胞増殖は歯ブラシの毛先が当たっているところに限局している。だから、歯間部歯肉(歯周病の初発で最頻発部位)を刺激する「つまようじ法」が効果的だった。