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インプラント周囲炎と歯周病を考える

感染症の予防

インプラント周囲炎と歯周病は感染症と考えられている。感染症は、感染源と宿主、環境の相互作用で起こったり、治ったりする。だから感染症を予防・治療するには、病原体(感染源)をやっつける方法が一つ、宿主を強くする方法も一つ、環境を変える方法も一つである。

病原体をやっつける

インプラント周囲炎や歯周病の病原菌はレッドコンプレックスと言われている細菌群だ。この細菌群を殺してしまったり、取り除けばよいのだが、殺菌してもまた生えてくるし、取り除いたとしても全くゼロにはできないので必ず再発する。スケーリングやブラッシングしても、病原体は絶対ゼロにはならないから、また増殖する。結局、追いかけっこになってしまい、効率は悪い。

宿主を強くする

上皮は最強の感染防護機構である。上皮が破れたら、次は免疫に頼らざるを得ない。レッドコンプレックスに対する抗体は産生されるが、それほど強いものではないので、抗原を中和するまでにはいかない。だから、なかなか治らない。獲得免疫に期待するのには無理がある。

現状では最強の防御機構である上皮を再生させるか、上皮がやられないようにすることが肝心だ。ブラッシングの刺激で歯肉細胞が増殖することが分かっている。だからブラッシングは効果的だが、細胞増殖が起こる場所は歯ブラシの毛先が当たっているところに限られる。普通のブラッシングでは期待通りにはいかない。何故なら感染症が起こる場所を刺激することを目的にしていないからだ。歯周病では歯と歯の間の歯肉を、インプラント周囲炎ではインプラント体の下の歯槽粘膜を刺激する。

環境を変える

レッドコンプレックスは、いずれも血液が必須栄養素となっている。歯肉出血を止めれば、栄養が遮断され増殖できず、休眠状態になってしまう。歯肉出血を止めるには、血管内皮細胞を増やすこと、上皮細胞を増やすこと、組織を修復させる線維芽細胞を増やすこと等があるが、ブラッシングの刺激でいずれの細胞も2-2.5倍増殖する。しかし、この現象は歯ブラシの毛先が当たっているところに限られる。だから歯と歯の間とインプラント体の下の粘膜に毛先が届くブラッシングをしなければならない。それが「つまようじ法」である。

つまようじ法

つまようじ法は歯垢除去効果もあるが、歯肉細胞の増殖を促す。従来の歯周病保存療法と比べて、1週間で有意差が出るほど歯肉出血を抑えることが出来る。また、上皮細胞や血管内皮細胞、線維芽細胞の増殖を促進することが出来るので、インプラント周囲炎や歯周病には最も有効なブラッシング方法である。